皮膚疾患

蕁麻疹(癮疹)

蕁麻疹(癮疹)の概要

蕁麻疹は常見される皮膚病の一種です。各種原因によって皮膚粘膜の血管拡張及び浸透性増加が引き起こされ一過性局部水腫性の損傷が発生します。皮膚上に鮮紅色あるいは蒼白色の水ぶくれが出現し、消えたり現れたりし、非常に痒みがあります。消失後は痕跡が残らないという特徴があります。

本病の発病素因は比較的複雑です。例えば薬物ではペニシリン類やスルファミン類など、食物では主に動物性蛋白の食物、魚・えび・かに或いは食物添加剤など、慢性感染症では例えば咽頭炎・中耳炎・腸炎なども発病の原因になりえます。精神緊張・内分泌の変化も蕁麻疹を発生させます。

この発病のメカニズムは変態反応と非変態反応の二種類があります。主要な症状は真皮水腫で皮膚毛細血管の血管拡張と充血です。中医学では「癮疹(いんしん)」などと呼ばれます。本病の発生の全てに稟賦不足(生まれつき身体が弱い)が見られ、虚弱体質や衛外不固となり、外邪に侵襲されて発病に至ります。或いは食物や薬物、感情の変化、病原体に感染することなどから営衛失和となり、内の流れず、外は泄する事ができず、皮毛腠理が鬱滞することで発病に至ります。

針灸治療は清熱疏風・衛外固表により自己免疫力を高めます。これが本病の治療に対する良い方法の一つで、慢性・頑固性蕁麻疹に対する治療効果は顕著です。

症状

皮膚には瘙痒感があり、早期から丘疹が出現し、鮮紅色・淡紅色或いは蒼白色を呈し、形態の大きさは不均一です。ある時は丘疹の表面に水疱が出現し、丘疹同士がまとまり合います。数分間或いは数時間後に消失し、消失後は跡を残しません。また一部の人は数日後消失してから、反復して起こることもあります。皮疹は局所的にも全身的にも起こります。もし、消化器官に起こった場合には、悪心・嘔吐・腹痛・下痢・が出現し、喉頭部と気管支に起こった場合には、咽喉のつまり感・息が詰まる感じ・呼吸困難や酷い場合には窒息が喉頭部の水腫に関する症状として出現します。病程は長い時も短い時もあります。

臨床的には以下の数種類型に分類できます。
(1)急性蕁麻疹:
よく急性に発病し、大小不均一な丘疹が発生します。丘疹は回状・環状或いは地図様に損害を起こし、いくつかの丘疹は融合して大きな一塊になります。丘疹には水疱・大疱・皮疹が見られ、突然現れたり突然消えたりします。また、お互いに消えたり現れたりもします。全身に発熱があり、多くは腹痛下痢と喉頭部水腫の症状が見られます。重傷で全身に見られる者は、血圧低下が見られたり、めまい・胸悶感などの症状が見られます。病程は1~2週間以内に完治します。

(2)慢性蕁麻疹:
病程が1~3ヶ月以上持続するものを慢性蕁麻疹と呼びます。皮疹は反復して発生し、瘙痒感は時には軽く時には重く、多くは疲労或いは寝不足後に症状が悪化します。よく引っかく事によって、皮膚には掻き傷或いは色素沈着が見られます。この類の病人には物理刺激によって蕁麻疹が併発します。例えば、爪で皮膚をこすると、刺激を受けた部位に線状の皮疹様損害が現れたり、水に濡れた後に触った部位に丘疹が出現します。

(3)血管神経性水腫:
この類の損害は口唇部に単発し、側面部には正常色の腫脹が出現します。圧迫によって皮膚浅表部の毛細血管が拡張します。腫脹は白色で、境界ははっきりしません。巨大蕁麻疹とも呼ばれ、瘙痒感は明確ではなく、数日内に自然消失します。反復して発生することもあり、一般的には全身症状はありません。少数の病人では咽喉部に発生し窒息を起こすことがあり、その際は危険です。

(4)丘疹性蕁麻疹:
皮疹の多くは丘疹様の紅色デキ物様損害です。丘疹の頭頂には小さな水疱があり、中の液体が出ることもあります。また一塊にまとまって発生もします。数は不定で、一般的には融合しません。瘙痒感は比較的重く、新旧の皮疹が同時に存在します。児童に多く発生し、成人でも発生します。春秋の季節は多発季節で、多くの患者では虫刺されを関係します。皮疹は10日間前後で消失し、消失後しばらくの間は色素沈着が見られることがあります。腰・四肢が多発部位です。

鑑別

本病で出現する皮疹には急速に発生して消失するという特徴があり、確定診断は難しくありません。

(1)腹痛を伴う蕁麻疹と虫垂炎・胆嚢炎との鑑別:
虫垂炎は転移性の右下腹痛・反跳痛の特徴があり、白血球総数と好中球が増加します。胆嚢炎では発熱・右上腹部に圧痛があり、体位変換時或いは呼吸時に疼痛が増悪します。よく右肩及び背部に放散痛が見られ、白血球総数は増加します。

(2)血管神経性水腫と接触性皮膚炎との鑑別:
後者には腫脹が見られるが、暴露部位或いは接触部位に皮膚炎変化が局所的におこります。

(3)皮疹性蕁麻疹と水痘との鑑別:
後者の病程は短く、発熱があり、水疱性の皮疹です。主な分布部位は頭面体幹部・口腔及び口峡部粘膜で紅斑水痘様の損傷が見られます。

鍼灸治療

(1)治則:
疏風固表、調和営衛、清営止痒。(風をちらし表を固める、営衛を調和させる、営血を冷し痒みを止める)

(2)配方:省略
(3)操作:省略
(4)治療頻度・期間:
刺絡法:毎日一回、十回を一療程とする、一週間間隔を開けた後に次の一療程行なう。
経穴刺法:毎日二回、十回を一療程とする、一療程後に一週間治療を停止し、次の一療程を行なう。

(治療頻度や治療期間は、理想的には上記ですが、一般的には、治療頻度は週2・3回で、治療期間は症状が改善するまで行ないます。また、予防や症状のコントロールを目的とした場合には、週1回もしくは2週間に1回の治療を長期間行ないます。)

治療理論

蕁麻疹は臨床で常見される皮膚病の一つです。これは一過性水腫の皮膚血管反応の一種で、臨床では皮疹様の損傷を呈します。急性者は突然発症し、時に隠れ時に現れ、痒みに際限がなく、急速に消失したりします。慢性者は繰り返して発病し、数日或いは数ヶ月に至ります。

中医学ではこの病に対する論述は比較的多く、例えば『金匱要略』では、「風気相搏、風強則為癮疹、身体発痒。」とあり、『儒門事親・小児瘡疱丹・癮疹旧蔽』には、「凡胎生血気之属、皆有蘊蓄濁悪熱毒之気。有一、二歳而発者、有三、五歳至七、八歳而作者、有老年而発丹、癮疹者。」とあり、本病の稟賦不耐が根本的な原因であることを説明しています。加えて腠理不密により衛外不固となり風邪外襲するもの、或いは寒、或いは熱、或いは湿を兼ね皮膚に鬱滞して発症するものがあり、ゆえに刺絡法を採用します。刺絡は邪を抜罐によって取り除き温通経絡することで、疏風固表の効果があります。また、経穴刺法の諸穴を併せて使う事で疏風固表・調和営衛の効果があり、腠理が密になり、営衛を和すことで風消痒止することになります。

ページの先頭へ