脳神経疾患の臨床と研究

片麻痺(脳梗塞・脳出血)

片麻痺(脳梗塞・脳出血)の概要

脳梗塞や脳出血など、脳の血管に関係する疾患を専門的には「脳血管障害」と言います。

この脳血管障害の後遺症で最も良く見られるのが「片麻痺」です。一般では「半身不随」と言うこともあります。右の脳に障害があると左半身の麻痺が起こるように、脳の障害部位と麻痺側は一般的には逆になります。

中医鍼灸では、どのように考えるか

中医学では、しっかり身体が動くためには全身各部分の気血の流れが滞りなく行なわれている必要があると考えます。

片麻痺では、気血の流れがある原因によってうまく行かず身体がうまく動かないと考えます。鍼灸治療によって気血の流れを改善させ、全身各部分が動くように治療を進めてゆくことを主体とします。これを中医学では「疏通経絡(そつうけいらく)」と言い、片麻痺の主となる治療方針です。

中医鍼灸では、どのように治療するのか

力がうまく入らない部分、具体的には腕なら肘や手首を伸ばす側の筋肉に対して主に刺針をしてゆきます。

片麻痺の場合、中医学ではバランスがとれずにうまく気血が流れないと解釈するため、筋肉に力が入る曲げる側ではなく、伸ばす側に刺針することで、両方のバランスをとるようにします。

治療の頻度は、脳血管障害の発症から6ヶ月以内(回復期)であればなるべく頻繁に治療したほうが良く(毎日もしくは隔日)、それ以降(維持期)は、治療を開始して1・2ヶ月は週2・3回で治療し、その後は徐々に間隔を広げ週1回か半月に一度くらいにしてゆくのがよいでしょう。

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害における後遺症に対する鍼灸治療の効果は、非常にすばらしいものがあります。特に、発症から三ヶ月以内の急性期や回復期での鍼灸治療は、運動障害に対して特に力を発揮し、後遺症の程度を軽減する事が知られています。また、運動器だけではなく、脳自体に対しても治療効果があるという研究報告もあります。

日本では、まだまだ片麻痺に対して鍼灸治療が有効であるということは知られていませんし、鍼灸治療自体もまだまだ知られていない部分が多いようです。ここで紹介させて頂いたように鍼灸で治療する事が出来るのです。

脳梗塞や脳出血の治療は時期を逃すと治療効果に大きな差が出てしまいます。これは、現代医学でも一緒です。いかに早い段階で適切な治療を始められるかどうかがポイントになります。

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