正常な月経は女性の青春期以後にある子宮の周期性出血で、神経体液系統によって調節が行なわれています。性腺は視床下部-下垂体の支配と相互制約を受けています。故にいかなる素因も性腺内分泌器官-子宮内膜に影響を与え一系統の機能異常を引き起こし月経失調に到ります。
月経失調は婦人科の常見病で、月経周期・月経期間・経血量・経血質の改変を含んでいます。本病は現代医学の排卵型機能性子宮出血の範疇に含まれます。神経内分泌系統機能障害によって、異常な子宮出血が発生することを、機能性子宮出血と呼ばれます。排卵型機能性子宮出血の大多数は出産可能年齢の機能性子宮出血で、恐らくはLHの相対的分泌不足或いは持久的分泌によるものによって、黄体の発育不全或いは萎縮不全が引き起こされたものです。それ以外に、現代医学で多くのその他の素因及び全身性疾病、例えば血液系統疾病(血小板減少性紫斑・再生障害性貧血・白血病など)、肝硬変、慢性腎炎、糖尿病および部分的膠原性疾病によって月経失調が発生している可能性を考える必要があります。
中医歴代の婦人科医籍では本病に対して十分に重視しており、月経失調を調節する事は多くの婦人科疾病の最も根本的な方法の一つであると認識しています。宋代陳素庵は「婦人諸病多由経水不調。調経、然後可以孕子、然後可以却疾、故以調経為首……既名月経、自応三旬一下、多則病、少則亦病、先期則病、後期則病、淋漓不止則病、瘀滞不通則病。故治療婦人之病、総以調経為第一。」と言っています。
月経失調は月経周期或いは経質・経量の変化によるもので、一般的には経行前期・経行後期・経行前後不定期・経量過多・経量過少などの諸証が含まれます。
月経周期失調の概念に関しては、毎回月経が来る時に前回の月経と比べて一週間以上前後するもの、酷い場合は一ヶ月に二度来る、或いは二三ヶ月に一度しか来ない場合で、且つ三ヶ月以上連続する月経周期者は、経行前期或いは後期と言います。もし月経が時には早く、時には遅く、連続で三回以上続く者は、経行前後不定期と呼ばれ、中医では経乱と呼ばれます。
もし、月経周期は問題ないが、経血量が明らかに正常よりも多い、あるいは月経期間が長すぎる、経血量が段々多くなる、などの場合は経量過多と呼ばれます。反対に、経血量が正常よりも明らかに少ない、或いは月経期間が短すぎる、酷い場合は経血量が極めて少なく、まるで点滴のように少ないものを、月経過少と呼びます。
(1)生理性周期失常:
毎回経期が28日に一度と言う訳ではないが、3~5日前後するのみで、その他の異常症状が見られないものは正常の範疇です。情緒変動医・気候変動或いはその他の原因が影響しているもので、時には1~2回の月経周期失調が起こります。或いは経量がやや多かったり、少なかったりします。これらは生理性月経周期失調で、月経失調とするべきではなく、鑑別に注意が必要です。
(2)無排卵性機能性子宮出血:
無排卵型機能性子宮出血は機能性子宮出血全体の約70%を占め、多くは青春期及び更年期の女性に発生します。青春期のエストロゲンレベル低下、或いはエストロゲン分泌の不安定、あるいはエストロゲンレベルが持続的に緩慢に上昇する、内膜の成長速度が血液供給を超えてしまい壊死し脱落してしまうことで、淋漓出血或いは突発性出血を形成します。更年期の卵巣機能暫時低下、卵胞刺激ホルモンレベルの長期増加、内膜の継続増殖、経期の毎回延長など、継続して内膜増生に血液供給が不足した時、脱落が開始し、子宮から大量出血及び周期の重度な不規則が発生します。無排卵型機能性子宮出血は中医では崩漏と呼ばれます。崩、これは経血がときに酷く出血して止まらないものを指し、経崩或いは崩中とも呼ばれます。漏、これは経血が滴り止らないことを指し、漏下或いは経漏とも呼ばれます。この二者はよく交替で出現するため、一般的には崩漏と呼ばれます。崩漏は中医婦人科の疑難重証で、早くは『内経』の中に「陰虚陽搏謂之崩」の論述が見られます。『諸病源候論』には「崩中漏下候」があり、「衝任之脈虚損、不能制約其経血、故血非時而下」とされています。排卵性機能性子宮出血は即ち月経失調で、無排卵型機能性子宮出血とは同一ではありません。多くは育齢期の婦人に見られ、一般的な症状は経量の変化或いは経期の変調で、症状は比較的軽いです。
(1)治則:
補脾益腎・養血調経(脾を補い腎を助ける、血を養い月経を整える);
或いは補気養血・調補衝任(気を補い血を養う、衝任脈を補いながら整える);
或いは散寒暖宮・温通経脈(寒邪を散らし子宮を温める、経脈を温めて通じさせる);
或いは清熱養陰・涼血調経(熱を冷まして陰を養う、血を冷まし月経を整える);
或いは疏肝解鬱・理気調経(肝を緩め鬱を解く、気を整え月経を調節する);
或いは利湿化濁・袪痰通経(湿を排泄し濁気を変化させる、痰を取り除き月経を通じさせる)。
(2)配方:省略
(3)操作:省略
(4)治療頻度・期間:毎日針刺を1回、30回を一療程とします。連続3~5療程観察します。
(治療頻度や治療期間は、理想的には上記ですが、一般的には、治療頻度は週2・3回で、治療期間は症状が改善するまで行ないます。また、予防や症状のコントロールを目的とした場合には、週1回もしくは2週間に1回の治療を長期間行ないます。)
中医学では月経失調を上記のようにいくつかに分類し治療にあたります。鍼灸治療ではこの治療方針にのっとり治療を進めてゆくのと同時に、子宮や卵巣等の局所付近に施術する事で更に治療効果をあげています。