皮膚疾患

湿疹(湿瘡)

湿疹(湿瘡)の概要

湿疹は多種損傷を持つ皮膚病の一つです。急性期では紅斑・丘疹・水疱・糜爛など炎症反応が出現します。慢性或いは静止期では患部の皮膚は乾燥・鱗屑・粗糙(きめが粗くざらざらしていること)及び苔癬(小さな丘疹が多発)様の変化をします。対称性・再発性であり、慢性的な経過を取る事や瘙痒がその特徴です。発病の原因は複雑で、一般的は遺伝因子による過敏体質が関係しているとされています。この類の患者は湿疹があること以外に、喘息や過敏性鼻炎或いは蕁麻疹などの疾病に罹り易く、一部の患者たちは精神緊張・過度な疲労によって湿疹が発生したり、湿疹を増悪させたりします。とりわけ慢性湿疹の患者ではそうで、往々にして精神損傷或いは自律神経が錯乱した時に皮疹が激烈な痒みを引き起こします。消化機能失調は胃腸吸収機能の錯乱を起こしよく湿疹を引き起こします。それ以外にも病巣の感染、内分泌失調、血液循環障害は皆湿疹の発病原因になります。

中国医学ではこの病は湿疹・浸淫瘡と呼ばれます。また発病部位が違うものに四弯風・旋耳瘡・苔病瘡などと呼ばれるものがあります。本病の発生は風・湿・熱もしくは風・湿が主要とされています。また、内風・内湿と外風と外湿に分かれます。外因方面では季候の変化によって風邪が外襲し、腠理不固になったり、或いは湿地に居た事で、霧露を感受したりします。内因では脾虚不運によって湿が内生します。心は火を主り、或いは精神緊張によって、情緒が安定せずに血熱に至り、湿熱と合わさって時間をかけて発病、或いは辛辣の物を過食し傷陰耗血し、血虚生風し、風が盛んになれば燥となり、燥は風を生み、風邪による皮疹の瘙痒は際限無く繰り返されます。鍼灸治療を本病に用い健脾利湿、養血潤燥、去風止痒をすることが出来ます。

症状

臨床での皮疹の症状は多種多様です。紅斑・丘疹・水疱・糜爛・結痂(かさぶたが出来る)・鱗屑・肥厚や皸裂(あかぎれが切れる)などが見られます。その病程と皮疹の症状は以下の三種に分けることができます。

(1)急性の多くは丘疹或いは水泡が密集して、境界ははっきりせず、面積の大きさは一定では無く、基底部分の赤みは掻いて感染症を起こし滲出や糜爛が出現します。毛嚢炎及び癤腫(吹き出物)、同側の頚部・腋窩及び鼠蹊部のリンパ節腫大も合併する事があります。皮疹はどんな部位にも発生し、かつ全身に広く発生する事もあります。一般的に四肢の屈曲側に多く、瘙痒感を伴います。

(2)亜急性湿疹の多くは急性湿疹が引き伸ばされたものです。皮膚損傷は丘疹・紅斑・鱗屑と結痂が主で、強烈は痒みを伴います。

(3)慢性湿疹の多くは急性・亜急性湿疹の反復発作によって形成されたものですが、少数の病人は発病から既に慢性が始まります。患部の皮膚は肥厚し、きめが粗くざらざらし、肌目は肥厚し、皮膚の色は暗紅或いは紫褐色を呈しています。よく引っかき傷・血のかさぶたを伴い、治癒後によく色素沈着を見ます。患者は際限のない痒みを感じます。病程はとても長く、この慢性皮疹は下腿・手・足・膝窩・外陰・肛門などの所に多く見られます。

鑑別

本病は典型的な皮疹を持ち、同時に紅斑・丘疹・水疱があり、ある種の損傷を主とします。皮疹はどんな部位にも発生しますが、対称性発作を呈することがよく見られ、境界ははっきりせず、局部発生もしますし、散在或いは全身に広く発生もします。痒みは人によって違い、酷い場合は痒みで夜寝れません、一般的には全身症状は無く、これらを根拠として診断を行ないます。以下の数種の病気とは鑑別しなくてはいけません。

(1)接触性皮膚炎:
比較的はっきりとした接触歴があり、病変は接触部位の局在的です。皮疹は比較的単一で、水泡を起こし易く、境界がはっきりしていています。病因を取り除き、接触から避ければとても早く治癒します。そして、再発はしずらいです。

(2)神経性皮膚炎:
明確な神経衰弱の症状があります。例えば不眠・夢を多く見る・イライラ焦るなどです。皮疹は首・背中・肘・膝・尾骶骨部などの摩擦される部位に好発します。皮疹は皮膚が肥厚・粗糙・苔癬様の変化が多く見られ、一般的には水泡・湿潤・糜爛は見られません。

(3)手足癬:
よく一部位に発生し、境界ははっきりしており、指(趾)間の皮膚に浸潤・糜爛が多く見られます。よく爪の奇形が見られます。夏季には症状が悪化することが多く、検査では菌糸が確認されます。

(4)多形性紅斑:
皮疹は四肢末端の伸筋側に多く発生します。水腫性斑丘疹で紅色を呈します。或いは頂端が扁平の丘疹、或いは虹彩に紅斑が見られます。発病後に発熱を伴うことがあり、関節や筋肉がだるく痛みます。病程は二週間から一ヶ月で、治癒後は痕跡を残しません。再発する事もあります。

(5)疥癬:
指のまた・腕の屈曲側・陰部或いは腋窩などによく見られます。丘疹は紅疱疹で、夜間に痒みが増悪し、顕微鏡下では疥虫を見つけることが出来ます。よく家族単位や集団単位で発病します。

鍼灸治療

(1)治則:
健脾利湿、養血去風、安神止痒。(脾を健やかにし湿を処理する、血を養って風を止める、神を安らかにして痒みを止める)

(2)配方:省略
(3)操作:省略
(4)治療頻度・期間:
刺絡法:隔日1回、5回を一療程とします。
皮部刺法:毎日1回、10回を一療程とします。
経穴刺法:毎日2回針刺し、10回を一療程とします。

(治療頻度や治療期間は、理想的には上記ですが、一般的には、治療頻度は週2・3回で、治療期間は症状が改善するまで行ないます。また、予防や症状のコントロールを目的とした場合には、週1回もしくは2週間に1回の治療を長期間行ないます。)

治療理論

湿疹は臨床で常見される皮膚病の一つです。多種の損傷性皮膚病を含むもので、臨床の急性期では紅斑・丘疹・水疱・糜爛などの炎症反応が出現します。慢性或いは静止期では患側の皮膚は乾燥・鱗屑・粗糙及び苔癬の変化が見られます。本病は対称性・再発性・慢性病程及び瘙痒感が特徴です。

発病原因は非常に複雑で、現代医学では遺伝素因・過敏性体質が関係し、精神の緊張・過度の疲労も関係していると認識しています。

中医学では本病の発生の主要は風・湿・熱などに責められるものであると認識しています。外因では外風内襲から腠理不固になります。内因では傷陰耗血から血虚生風し、風盛則燥となり、復感風邪することで皮疹の痒みには際限がありません。本病の治療は健脾利湿、養血潤燥、去風止痒です。諸穴を配合使用することで、去風・安神・止痒の効を協奏することが出来ます。

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