皮膚疾患

帯状疱疹(纏腰火丹)

帯状疱疹(纏腰火丹)の概要

纏腰火丹(てんようかたん)は、腰脇部に大小不揃いの水疱が発生するものを指します。古医籍中での名称は単一では無く、『外科大成』では「纏腰火丹」、『外科啓玄』では「蜘蛛疱」、後世では「串腰龍」と呼ばれています。

現代医学では「帯状庖疹」と呼ばれ、水痘-帯状疱疹ウイルスに感染することによって引き起こされた急性の疱疹性皮膚病です。その主要な臨床特徴は、発疹部位には往々にして、まず神経痛か痒みか皮膚の感覚過敏があり、神経痛が最も突出しています。疱疹は粟粒状で、大きさは緑豆ほどで、疱液は澄んでいて、疱壁は緊張して光沢があります。周囲は発赤し、数個が群れを形成して現れます。

古人は纏腰火丹に対して病名・症状から病機病位まで全て詳しく深い論述をしています。『医宗金鑑・外科心法要訣』には「纏腰火丹蛇串中、干湿紅黄似珠形、肝心脾肺風熱湿、纏腰已遍不能坐。」とあります。

帯状庖疹分布に対する特徴は、現代医学で一側の末梢神経に沿って帯状に分布する事が知られています。よく併せて神経痛と局所リンパの結腫が見られ、回復後の再発率はとても低いです。

症状

本病の発病時は、局部の皮膚が焼けるように或いは刺すように痛み、皮膚感覚が過敏になります。その中の大多数が刺痛後の1~4日後に皮疹が出現し、極めて少数の患者では前駆症状が無く発疹します。よく全身症状を伴い、例えば微熱、食欲不振、全身の不快感など持ちます。疱疹は粟粒状を呈し、緑豆大の水泡で、数珠のように積み重なります。よく帯状に並び、疱液は初めは透明で、後に混濁に換わります。各水疱群の間の皮膚は正常です。お互いに融合して弥漫的な大きな一塊の損傷になる時もあります。付近のリンパ節はよく脹痛があり、数日後に水泡が混濁し化膿、或いは部分的に破裂し、糜爛面が露出し、最後には乾燥して痂皮化します。痂皮が脱落後、一過性の淡紅色斑或いは色素沈着が遺留し、もし続発感染が無ければ、治癒後瘢痕は残りません。病気期間は2~4週間です。

鑑別

(1)単純疱疹
本病は単純ヘルペスウイルスに感染することで発病します。よく口・鼻腔及び生殖器周囲に分布する群集性疱疹です。故によく口唇ヘルペス・性器ヘルペスとも呼ばれます。その臨床症状は疱疹の発生部位により異なった症状で、疱疹が口唇・頬粘膜・上顎部などの部位に発生するものは、1~5歳の児童に多く見られ、水疱は比較的小さく、局部炎症は顕著で、よだれを流し、呼吸の時に口臭があります。発熱・倦怠感・食欲不振などの全身症状も伴うことがあります。疱疹が生殖器に発生するものは比較的珍しく、多くは性交感染によって引き起こされます。疱疹が角膜に発生したものは角膜穿孔・前房蓄膿などの症状を容易に引き起こし、失明に至る事もあります。単純疱疹全体としては皮膚と粘膜の境界の所に好発し、分布に一定の規律は見られず、水疱は比較的破れやすく、疼痛は顕著では有りません。よく再発します。

(2)接触性皮膚炎
外界の物質に接触することで発生する皮膚炎症反応で、その臨床特徴は接触部位に辺縁が鮮明な皮膚損害が発生します。軽症者は水腫性紅斑で、重症者には丘疹・水疱・大疱・表皮弛緩が見られ、酷い場合には壊死に至ります。形態は比較的に一致し、瘙痒が見られますが痛みは不明確です。

鍼灸治療

(1)治則
去湿清熱、消疹止痛(湿を取り除き熱を冷ます、できものを消し痛みを止める)

(2)配方:省略
(3)操作:省略

(4)治療頻度・期間
刺絡法:毎日或いは隔日1回、7回を1療程とします。
経穴刺法:毎日2回、10日を1療程とします。療程中は治療を中断してはいけません。

(治療頻度や治療期間は、理想的には上記のものですが、一般的には、治療頻度は週2・3回で、治療期間は症状が改善するまで行います。また、後遺症などが起こってしまった場合には、週1・2回の治療を3~6ヶ月の長期間行います。)

治療理論

纏腰火丹は、現代医学では帯状庖疹と呼ばれます。
多くは脾胃運化失常から、水湿停滞し、長くなると熱化します。或いは肝胆湿熱から鬱滞して火化します。或いは湿熱毒邪が経脈を侵襲します。また、湿熱内蘊して、脈絡を塞いで、腠理から発生して、皮部に達します。故に疱疹は群がり痒みが起こり痛みは酷いです。
治療上では、よく清熱瀉火・解毒利湿の方法を用います。刺絡療法に針灸を配合し運用することで、治療効果は際立って顕著で、且つ効果が早いです。薬物をまったく使用しなくても全治することが不可能ではありません。
刺絡抜罐は血液循環を促進し、代謝を増強します。局部の免疫状態の機能を改善する事で、ウイルスを滅ぼす事ができ、細菌の続発感染を抑制し、帯状庖疹の治癒作用を加速させます。臨床では数百症例の蓄積があり、普通の針刺方法と比較すると治療効果は顕著に良く、即効性の止痛消疹の効果があります。
中医理論に基づいて、その病因病機を研究すると、邪が経脈を阻害し、皮部を滞らせます。また皮部は「経脈為紀」から、その皮部の発生部位に沿います。血を刺す即ち本経の気血を調節し疏泄することで皮部を通過することが出来、邪を外に追い出す事ができます。更に針刺にて豊隆、陰陵泉を配合する事で去湿清熱・通調経脈瘀阻します。これ真に「菀陳則除之、去血脈也」。

ページの先頭へ