糖尿病は常見される代謝内分泌病の一つで、原発性と続発性の二種類に分けられます。
糖尿病は中医では消渇病と呼ばれ、「上消」、「中消」、「下消」に分けられます。しかし臨床上では症状が重なる事が多く、しっかりと区分けする事は難しいです。よって「三消」あるいは「消渇」とまとめて呼ばれます。
中医と現代医学の本病の病因に対する認識は比較的近いものがあります。中医学では、長期間に及ぶ油っぽいもの、甘いもの、酒、味の濃いものの食べ過ぎ、辛く刺激が強い食べ物、セックス、労働、感情、薬害などによって湿熱或いは燥熱内盛が引き起こされ、肺、脾、腎陰が足りなくなり、布津、受納、運化、滋潤の作用が失調して消渇が出現すると認識しています。現代医学では、本病の発生とインスリンの絶対或いは相対的分泌不足によって引き起こされた代謝異常に関係があると認識しています。その病理変化は糖類、たんぱく質、脂肪、水及び電解質などの代謝異常で、重大な失調では酸塩基平衡失調、ケトアシドーシス、高浸透圧昏睡、乳酸アシドーシスによって生命を脅かします。簡単に化膿性感染、尿路感染などが発生します。病気が長期に及ぶとよく心脳血管、腎、眼および神経病変を併発します。
針刺治療は本病の有効な治療方法の一つです。本病の治療過程では、腎虚が発病の主な理論となることに重点を置きます。腎の陰陽調整を中心に制定し、五臓の調整を補助の治療方案とすることで、臨床では満足な治療効果を得る事が出来ます。
(1)陽消証(陰虚内熱)
煩渇引飲・消穀善飢・小便頻数、或いは混濁如膏・形体消痩、或いは大便秘結・腰膝酸軟・頭昏・耳鳴、舌紅少苔・脈細或いは滑。
(2)陰消証(気虚陽衰)
口渇引飲、或いは飲而渇不解・多食、或いは飲食減少・小便頻数或いは混濁如脂膏・神疲乏力・畏寒肢冷或いは面黒耳焦、舌淡苔白而乾・脈細無力。
糖尿病は代謝内分泌疾病に属します。しかし多くの疾病が糖尿病で見られる多くの症状、所見と近いものが見られます。よって糖尿病患者の治療を進める時には、しっかり鑑別診断をしなければいけません。
(1)非ブドウ糖尿
例えば乳糖尿は乳児或いは妊婦或いは幼児に見られます。果糖及びペントースは大量の果物を食べた後に見られることがあり、非常に稀な先天性疾患です。尿糖に陽性反応が見られた時は、臨床状況を分析判断するべきで、すぐに糖尿病を肯定するべきではありません。
(2)非糖尿病性ブドウ糖尿
飢餓性糖尿:
飢餓状態になった時、後日突然大量の糖類食物を取ると、インスリンの分泌が一時的に適応できなくなり、糖尿及びブドウ耐糖能の低減が起こります。鑑別の際は病情分析に注意し、飲食・食事総量に注意します。並びに空腹時血糖は正常か酷い場合は低下傾向になります。必要な時は毎日250g以上糖類を補給し、3日後に耐糖能試験を再度行なう事で明確に診断する事ができます。
食後糖尿:
糖尿が大量に糖類食物を食べた後或いは急速に吸収した場合に発生します。但し血糖及び耐糖能試験は正常です。
腎性糖尿:
尿細管の糖再吸収能力減少によって腎糖閾値が低下し、血糖は正常で尿糖が見られます。腎機能状況から区別することが出来ます。
妊娠性糖尿:
少数の妊娠期の女性に見られ、一過性腎糖閾値の低下が起こった際に尿糖が見られます。産後に再検査すれば鑑別することが出来ます。
神経性糖尿:
脳出血・脳腫瘍・頭蓋骨骨折・窒素・麻酔時に血糖が一過性に高くなり尿糖が伴うことがあります。病情から鑑別する事ができます。
甲状腺機能亢進:
甲状腺機能亢進時、体重は明確に減少します。これは過度の甲状腺ホルモンによって腸蠕動が興奮状態になり大便の回数が増加することがあります。これは時によって脂肪吸収不良から脂肪痢が起こることによります。同時に心血管系統および眼球突出・眼振・甲状腺血管雑音が聴取されます。糖尿病の体重減少と区別する必要があります。
(1)治則
陰虚内熱型、益陰瀉熱(陰分を補い、熱を瀉す)。気虚陽衰型、温陽益気(陽気を温め、気を補う)。
(2)配方:省略
(3)操作:省略
(4)治療頻度・期間
初期:
経穴刺法を毎日1~2回、その他の刺法は毎日1回。1ヶ月以内は間隔を空けてはいけません。1ヶ月以降、症状の改善が見られてきたら、経穴刺法は毎日或いは隔日1回、その他の刺法は隔日或いは毎週2回に変更します。療程は一般的には1~2ヶ月です。
安定期:
経穴刺法は隔日1回、その他の刺法は毎週2回。療程は一般的には3~6ヶ月です。
(治療頻度や治療期間は、理想的には上記のものですが、一般的には、初期の場合は、治療頻度は週2・3回で、治療期間は症状が改善するまで行います。また、安定期で症状のコントロールを目的とした場合には、週1・2回の治療を3~6ヶ月の長期間行います。)
糖尿病は、、中医学では「消渇」の範疇に帰属し、臨床多発病の一つです。
『素問・奇病論』曰く、「此肥美之所発也、此人数食甘美而多肥也、肥者令人内熱、甘者令人中満、故其気上溢、転為消渇。」『霊枢・五変』曰く、「五臓皆柔弱者、善病消癉。」と書かれており、明確に消渇病の病因を示しています。これ以外に、『外台秘要・消渇』の『古今録験』曰く、「渇而飲水多、小便数、有脂、似麦片甜者、皆是消渇病也。」併せて「毎発即小便至甜」、「焦枯消痩」などと記載があります。
糖尿病、非インスリン依存型糖尿病は針灸治療の比較的良い適応症の一つです。長年の臨床実践と研究を通して、非インスリン依存型糖尿病の針刺治療は、明確な膵頭機能の調整、体内の代謝状況の改善が出来ると認識しており、病情を一定程度緩解させる可能性があります。
中医学では以下のように認識しています。
糖尿病の発生は飲食不節、禀賦不足(先天性の力不足)、労欲過度などによって引き起こされた燥熱内盛で、肺、脾、胃、腎陰虧虚が布津、受納、運化、滋潤功能に失調をきたし、陽消の証に到ります。その中で臓腑陰虧は本で、燥熱は標です。燥熱が盛んになると陰液は益々足りなくなり、陰液が足りなくなると燥熱は益々盛んになります。長期間に及ぶ陰病は陽に及び、気虚陽衰の消渇である陰消の証に到ります。消渇は肺、脾、腎のいずれかにありますが、常にお互いに影響しあい、ついには数個の臓腑病変が同時に出現します。腎は陰陽の根で、腎虚はよく肺、脾の輸布、運化功能に不利な影響を与えます。腎陰虚即ち虚火内生は心肺及び脾胃を灼傷し陰消を形成させます。腎陽虚即ち陰寒内生は火不暖土を形成し、陽消を激しくします。それは、上、中、下三消の肺、脾、腎三臓中で腎がその根本だからです。よって本方では調理腎陰腎陽を以って十分な治療効果を収めています。針灸の作用を通して、患者体内の輸布、運化などの功能は改善され、病情を制御、緩解させ、糖尿病治療の目的を達成する事ができます。