東洋医学という選択肢

第一章 治療するということ

1 MND・CVD・CIDPの現状

難しい病気は現代医学的にも東洋医学的にも難しい

 現代医学的に治療が難しい病気と言う事が分かり、東洋医学の門を叩く方の中には、何かマジック的なと言いますか、奇跡的なと言いますか、その様な効果を期待されている方がいらっしゃいます。確かに、腰を触らないのに腰痛が治ったりすることはあります。しかし、それも先人達が経験や理論をまとめたものを私達が東洋医学として学んだものでマジックでも無ければ奇跡でもありません。ただ現代の私達にはちょっと理解しづらいと言うだけです。
 東洋医学にも現代医学と同様に、医学としてのしっかりとした理論や経験があります。この先人たちの経験を持ってしても難しい病気は、やはり東洋医学でも難しい病気です。

病名が分かることが目的では無い

 病名がはっきりしないから現代医学的な検査をいろいろな所で受ける方がいらっしゃいます。必要な検査であればやるべきですが、病名を知りたいからたくさんの検査をしていませんか。
 現代医学的にも東洋医学的にも診断結果を出すことは治療につながるので必要な事です。治療につながるから検査や診断が必要なのであって、病名を知りたいから検査をする訳ではありません。病名が分からなくても治療方法があるならそれでいいのです。

難しい病気でも東洋医学的な診断や治療が無い訳では無い

 東洋医学には病気に対して治療をする「弁病施治(べんびょうせち)」と、体の状態に対して治療をする「弁証論治(べんしょうろんち)」と言うものがあります。病気がはっきりしなくても、体質や体調を見計らって治療をすることができますので、難しい病気や病名の付かない病気であっても治療に取り組むことができます。
 しかし、現代医学の病名が要らないと言う意味ではありません。情報は多い方が治療に有利に働きます。現代医学も東洋医学も使えるものは全て使って治療に臨みます。

MNDとCVDとCIDP

 運動ニューロン病(以下MND)や筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は非常に特殊な病気です。運動機能が低下する様々な病気が概ね否定された時にMNDやALSの疑いありと診断を受けます。実際は、いろいろな検査結果から考えますが、ざっくり言うとこんな感じなのです。
 では運動機能が低下する他の病気にはどのようなものがあるでしょうか。まず脳血管障害(以下CVD)です。脳梗塞や脳出血などの脳の血管に起因する病気のことです。そして慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(以下CIDP)や多巣性運動ニューロパチー(以下MMN)などの自己免疫性に起こるものがあります。自己免疫性に起こる疾患は、簡単に言えば花粉症や関節リウマチの化け物のようなものです。
 大きく分けると、この3分類になりますが、それぞれの症状の現れ方が違います。CVDは急激に発症して症状が急激に現れます。一定期間ののち症状は軽減してゆくのが一般的です。CIDPなどは周期的に症状の悪化と軽減を繰り返します。MNDは徐々に悪化してゆきます。いろいろな検査や今挙げた症状の変化によって現代医学的には診断してゆきますが、判断の難しい場合も多くあります。
 もし、CVDやCIDPなどが検査結果から考えづらかった場合、比較的早い段階でMNDやALSの疑いありと診断を受けることがあります。インターネットでALSを調べると大変なことがたくさん書いてあります。しかし現実は、はっきりとMNDやALSとは思えない場合もありますし、もしMNDだったとしても人によって進行の速度や症状にすごく違いがあります。とにかく判断が難しい病気だと言う事を覚えておいて下さい。

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