脳や神経に鍼灸治療が良いと考えるからには、それに特化した診断や治療があるべきです。今までの経験や、先生方の考えを参考に《脳病六綱》という診断方法を制定し、診断に沿った治療方法を定めて治療にあたっています。
具体的には、脳や神経の病気を(1)静躁、(2)精神、(3)清濁で分類します。
(1)は病気の動きを診ます。静証とは症状が静かなこと、例えば一般的な脳梗塞などです。躁証とは症状が動くこと、例えばパーキンソン病などです。
(2)は病気の場所を診ます。精証とは病が精髄にあることで、老化によって起こるものなどです。神証とは病が脳神にあることで、一過性に起こるものなどです。
(3)は病気の性質を診ます。清証とは元気が足りないことで、濁証とは排泄がうまくいっていないことです。
これらのような基準で、まず脳や神経の病気の特徴をとらえて治療の大方針にします。この《脳病六綱》は当院独自の方法で、この《脳病六綱》をしっかり把握することで鍼灸治療だけではなく、漢方薬や食事療法など、他の治療方法をどのように組み込んでゆくのかを考えられるようになります。
大阪の新城三六先生が考案された治療理論です。
人体も宇宙から影響を受けており、太陽系の惑星配列と人体の経絡臓腑には何らかの関係がある。という仮説から考えられたものですが、新城先生の30年以上に及ぶ長い臨床経験を通して、その理論体系は裏付けられており、また、たくさんの鍼灸師がその理論を元に治療を行い、理論の正当性を実感しています。
要は、「この理論を理解して鍼灸治療をすると良く効く」ということです(笑)。
中国の言葉に、「内科は風喘鼓噎、婦人科は経帯胎産、小児科は麻痘驚疳、針灸は痺厥痴癱」というものがあります。
鍼灸が得意な症状は、「痺」つまり痛みのある症状のこと。「厥」つまり意識を失うような症状のこと。「痴」つまり痴呆症状のこと。「癱」つまり麻痺、半身麻痺の症状のことです。どれも、現代で考えると脳や神経に関係する症状です。
鍼灸院で全てに対応できる訳ではありませんが、脳や神経に特化した大学病院で研修を続け、運動ニューロン病(以下MND)や筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)、脳血管障害(以下CVD)などの病気をたくさん診て、患者さんと共に治療に取り組んできた当院だからできる治療があると思っています。