脳神経疾患の臨床と研究

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の臨床報告

症例

全10例。男7例、女3例。年齢は最年少者20歳、最年長者49歳、平均36.8歳。病気の過程は最短で6ヶ月、最長で18ヶ月、大部分は1年以上。

1.本群病例の診断基準は、(1)上肢の筋肉に萎縮性麻痺が見られる、(2)萎縮した筋肉の初期には筋線維束攣縮が見られ、腱反射が強い、或いは亢進している、(3)下肢は痙攣性麻痺が見られる、(4)感覚障害は見られない、(5)徐々に延髄麻痺が発生する。

2.本病の治療に対して、既存の多くは「特殊な治療は無い」と認識しており、診断されると「予後不良」とされてきた。中医理論から考えると、本病は「痿証」に属し、陽明湿熱内蘊、肺受爍熱、気液槁枯に至ります。経験的に針灸治療後、比較的良い効果を収めています。

治療方法

1.取穴 大椎・肩グウ・曲池・手三里・合谷・魚際・太淵・足三里・伏兎・風市・環跳・陽陵泉・絶骨

2.操作 省略

3.補助治療 ビタミンB1・ニコチン酸を内服してもよく、萎縮筋肉の回復を促す可能性があります。患者自身の精神素因や機能訓練は共に重要ですので、治療中は患者の主観的能動性を充分に調節する必要があります。

治療効果

10例中、本法治療後、2例の治療中断を除いた8例の患者では、5例は臨床的治癒、2例は改善、1例は変化なしであった。

原文
天津市精神病防治院 魏炯明
《天津医薬》,1975,5:259

30年ほど前の臨床報告集に出てくる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の臨床治療報告です。

この報告だけでは、ALSに対して鍼灸治療が有効であると言う裏付けにはなりません。しかし、多くの中医針灸臨床家が実感としても、ALSを代表とする運動ニューロン疾患に対して、一定の治療効果や病気の進行を抑制する効果があると実感していると言う報告にはなるでしょう。私自身も、臨床を通して同じように、一定の治療効果があると感じています。

今後もこのような報告があれば折を見て紹介してゆきたいと思います。

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