脳神経疾患の臨床と研究

仮性延髄麻痺(脳梗塞・脳出血)

仮性延髄麻痺(脳梗塞・脳出血)の概要

脳幹の延髄という部分に関する病気の障害で、発語・嚥下・咀嚼が出来なくなる、もしくは障害されることを「(真性)延髄麻痺」もしくは「仮性延髄麻痺」と言います。

両者の違いは、「脳のどの部分に障害があるか」ですが、共に脳内病変は両側性です。脳血管障害性仮性延髄麻痺の原因としては、小規模な何回かの脳梗塞や脳出血であることが多いです。この場合の特徴は、運動麻痺や感覚障害といった症状を伴う場合がほとんどだという点です。

中医鍼灸では、どのように考えるか

中医学では、舌やのどの動きが良くないのはその部分に気血がうまく流れていないからであると考えます。また、舌やのどに気血を送る元にも問題があれば同様に動きがうまくゆきません。

よって、舌やのどに対する気血の流れを良くする治療と、舌をコントロールしている「心」、のどをコントロールしている「肺」を調整する治療をあわせて行なってゆきます。

中医鍼灸では、どのように治療するのか

実際の治療は、あごの下から舌に向けて刺針したり、耳の後ろからのどに向けて刺針したりします。また、手や足のツボを使って「心」「肺」を整えるような治療もします。

脳血管障害による仮性球麻痺症状を持つ場合は、全身の症状がかなり重篤な場合から軽度のものまで幅が広いため、治療に使用する鍼や刺激量にも幅があります。よって、治療頻度や期間もかなりの幅があります。

一般的には、片麻痺の治療と同じように発症から3ヶ月以内(回復期)であればなるべく頻繁に治療したほうが良く(毎日もしくは隔日)、それ以降(維持期)は、治療を開始して1・2ヶ月は週2・3回で治療し、その後は徐々に間隔を広げ週1回か半月に一度くらいにしてゆくという感じですが、仮性球麻痺以外の症状があまり顕著でないのであれば、比較的治療効果は良いように感じていますので、比較的早く症状が改善されるかもしれません。

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害における後遺症に対する鍼灸治療の効果は、非常にすばらしいものがあります。特に、発症から三ヶ月以内の急性期や回復期での鍼灸治療は、運動障害に対して特に力を発揮し、後遺症の程度を軽減する事が知られています。また、運動器だけではなく、脳自体に対しても治療効果があるという研究報告もあります。

日本では、まだまだ片麻痺に対して鍼灸治療が有効であるということは知られていませんし、鍼灸治療自体もまだまだ知られていない部分が多いようです。ここで紹介させて頂いたように鍼灸で治療する事が出来るのです。

脳梗塞や脳出血の治療は時期を逃すと治療効果に大きな差が出てしまいます。これは、現代医学でも一緒です。いかに早い段階で適切な治療を始められるかどうかがポイントになります。

ページの先頭へ