まっちゃん先生のコラム

症例報告:脳梗塞

●患者 40代男性

●主訴 左半身麻痺

●病歴 二週間前に右大脳に脳梗塞を発症。発症時は左半身の無力と軽度の構語障害(ろれつが回らない状態)が見られた。現在は随分と回復したが、まだ左半身の動きが悪く、感覚も少し鈍い。

●検査 会話は可能だが、軽度に構語障害あり。左上肢はMMT4級(軽度の抵抗に抗して動かすことができる)、ごく軽度だが関節が動かしにくくなっていた。歩行は可能で、ごく軽度に跛行(びっこ。足を引きずって歩く状態)が見られる。

●診断
 東洋医学 中風(中経絡)
 現代医学(参考) 脳梗塞
●治療方針

 ①中風に対する治療法である醒脳開竅を施す
 ②東洋医学的に、脳(神)、肝・腎に対して治療
 ③左上肢・下肢に対して動きを良くする、および感覚を改善させるように治療
 ④構語障害に対して治療

●経過
 初診後より、睡眠状態に改善があり。3回目の診療後より治療後の歩行がスムーズになった実感があり。8回目の診療後には、少し水泳ができるようになったとのこと。10回目の診療時、1か月後に復職が決定。疲れ易さ、疲労による症状の増悪は見られるが、症状はほぼ改善。以後、体調管理を含め治療を継続。

 典型的な脳梗塞でしたが、脳梗塞の程度が軽度であったこと、そして鍼灸治療が早い段階(急性期)から開始できたことが、とてもスムーズに、またとても良い治療結果が得られた大きな要因でした。
 この症例のように、早い段階(1ヶ月以内)から治療が開始でき、また頻繁に(週2・3回以上)できれば、とても良い治療効果が見られることが少なくありません。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害は時間との勝負です。これは現代医学でも東洋医学でも一緒です。とにかく可能な限り早い段階から治療することが肝要です。


※東洋医学用語説明
①肝:現代医学的な肝臓とは少し違い、東洋医学では心身共に適度な緊張感で機能するように調節する作用、全身各部へ必要な血液量を分配する機能、胆汁を作る機能を持つ主要臓腑とされる。

②腎:現代医学的な腎臓とは少し違い、東洋医学では全身における水の調節機能、成長・生殖に関する機能を持つ主要臓腑とされる。

③脳:現代医学的な脳とほぼ同じ。精神の元であり、全身をコントロールする。

④醒脳開竅:一過性の脳(神)にトラブルが出た時に用いられる治療方針の一つで、中風(脳卒中)などに対して用いられる。
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