まっちゃん先生のコラム

脳と神経の特殊鍼法――醒脳開竅針刺法

1.醒脳開竅針刺法とは?

天津中医薬大学第一附属医院

 「醒脳開竅(せいのうかいきょう)」針刺法は、中国天津にある天津中医薬大学第一附属医院の名誉院長である石学敏医師が1972年に始めた、中風病(脳卒中)に対する鍼灸治療法です。脳卒中に対して鍼灸治療における治療法則と方法を新たに提案し、中国最大規模の鍼灸科で数百人もの医師が数百万人の患者さまに対して、40年以上に及び実践してきた治療方法です。

 醒脳開竅針刺法は、大きく分けて三部分の要素を持っています。
 ①少数の特定穴を用いて、定められた方法と手順で行う。
 ②患者さまの病状を正しく判断し、決められた刺激量を加える。
 ③現在の病状と症状から、基本処方に加減して治療に臨む。

 一見すると、当たり前のことのようですが、日本国内はもとより、中国国内でも、これだけ大規模に一つの治療方法を取り扱い、治療効果を上げている鍼灸治療の方法は他にはありません。



2.代表特定穴の基本作用

①適宜に心臓を保護し、心筋の収縮力を増強し、心拍出量および冠動脈血流量を増加させ、併せて脳へ十分な血流を供給し、脳虚血に耐えられる時間を延ばします。

②顔面神経と三叉神経の分枝への刺激を行います。脳血管自身の調節作用の賦活、収縮痙攣している脳血管の弛緩、微小循環の改善、微小血管の弛緩を、心臓の血液供給作用を更に良いものにします。同時に脳神経細胞を興奮させ、中枢神経系の複雑な整合作用を発揮させます。また神経細胞の利用率量を増加させ、各種障害に対する抵抗力を増強させ、脳の保護作用を発揮させます。



3.治療範囲

基本は脳卒中(脳梗塞・脳出血など)に対しての治療が、その範囲となります。また、以下の脳卒中(脳梗塞・脳出血など)の合併症や後遺症も治療の対象になります。

合併症:仮性球麻痺、嚥下障害、構語障害、便秘、小便異常、運動失調、失明・複視、肩関節痛・肩関節周囲炎・脳血管性認知症・睡眠障害など
後遺症:顔面麻痺、構語障害、失語、手指の握りしめ、上肢麻痺、下肢麻痺、内反足など

腕への刺鍼

4.治療における注意点

①できるだけ早く治療に取りかかることが重要です。中国国内の多くの研究や報告から、発症から早い段階で治療を始めた方が治療効果が優れていることが分かっています。

②鍼灸における刺激量は病状を十分に把握して判断する必要があります。つまり鍼灸治療に対する十分な知識や経験を経た施術者からの施術が必要になります。

③醒脳開竅針刺法における手順を十分に把握して運用する必要性があります。つまり醒脳開竅針刺法に対する十分な理解と研修、そして実践できる技術が必要です。

④できるだけ頻繁な治療が必要です。急性期では基本的には毎日、回復期・後遺症期では週2~3回以上の治療が理想です。受診回数は30~50回は継続して治療します。



5.応用

 醒脳開竅針刺法は数十年に及ぶ、臨床や研究を通して有効な治療方法であることが繰り返し証明されています。そして、脳卒中(脳梗塞・脳出血など)や関連症状以外にも適切な手順を踏んで醒脳開竅針刺法を用いることによって一定の治療効果が得られることが知られています。

 ①急性症状:意識障害、ショック状態、中毒治療の補助など

 ②精神疾患:身体表現性障害による痙攣・嘔吐・麻痺など、認知障害、うつ病など

 ③難治性疼痛:坐骨神経痛など

 ④脳関連疾患:小児麻痺、老年性舞踏病、もやもや病、運動ニューロン病、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、脳外傷(頭蓋骨骨折、手術後遺症など)など

 ⑤その他:神経因性膀胱、頚性眩暈(頚椎症)、発作性睡眠病(ナルコレプシー)、メニエール病、突発性難聴など



参考書籍
『名医針灸特色療法』黄勁柏 人民軍医出版社

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