症例報告:一過性脳虚血状態(TIA)の疑い
●患者 60代男性
●主訴 腰下肢痛
●病歴 (奥様より)以前より腰痛を患っていて、時々足の調子も良くない時があり、足を引きずりながら歩くこともあった。今朝、散歩から帰ってきたら様子がおかしく、腰を押えて足を引きずっていた。腰や足が痛いのか話を聞いても、はっきりとした返事が返ってこなかったとのこと。
●検査 正常歩行しているがゆっくり。質問への対応がやや不明瞭。神経学的検査に所見あり。(詳細は省略)
●診断
東洋医学 中風(一般的には片側半身に動かしづらさや感覚が鈍くなるなどの症状。脳出血などの脳血管障害の東洋医学的な表現。)
現代医学(参考) 一過性脳虚血状態(一時的に脳血管の血流が減少したり、血管そのものが閉塞したために、脳梗塞のような状態)の疑い。
●治療方針
①中風に対する治療法である醒脳開竅を施す
②東洋医学的に、脳(神)、肝・腎に対して治療
●経過
治療直後から、質問などに対する反応に改善が見られる。また歩行をはじめとする動作も機敏になる。
●アドバイス
一過性脳虚血状態(TIA)を疑う状態であるため、現代医学的に検査を必要とする。また併せて、全身のチェックもするとよい。
もし現代医学的に大きな問題が見られず通院が可能であれば、現在の体調を整える目的や似た様な状況の再発を予防する目的で、3~6ヶ月の間は治療を続けた方が良い。
この症例は、私が病院勤務していた時のものですが、まさに軽度の脳梗塞(一過性に起こっただけで正確には脳梗塞ではありません)が起こった直後に治療ができた、日本では珍しい症例です。治療直後から動きや応対に変化が見られ、次の日に来院された時には、まるで別人のようにしっかりした状態になっていました。その後も、治療を継続し、症状の再発することも無く、現代医学的にも問題は見られず、通常の生活に戻られました。
※東洋医学用語説明
①肝:現代医学的な肝臓とは少し違い、東洋医学では心身共に適度な緊張感で機能するように調節する作用、全身各部へ必要な血液量を分配する機能、胆汁を作る機能を持つ主要臓腑とされる。
②腎:現代医学的な腎臓とは少し違い、東洋医学では全身における水の調節機能、成長・生殖に関する機能を持つ主要臓腑とされる。
③脳:現代医学的な脳とほぼ同じ。精神の元であり、全身をコントロールする。
④醒脳開竅:一過性の脳(神)にトラブルが出た時に用いられる治療方針の一つで、中風(脳卒中)などに対して用いられる。
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