東洋医学という選択肢
醒脳開竅法とは
天津中医薬大学第一附属医院(以下一附院)の名誉院長である石学敏先生が考案したCVDの治療のために作られた治療方法です。鍼灸治療が中心にあり、それ以外にも漢方薬・食養生・リハビリなどの治療に及び、東洋医学の治療法を大きく取りいれた治療システムです。
一附院では既に、40年ほど臨床運用されていて、中国の国内外を問わず、たくさんの医師を輩出し、アメリカでは映画で取り上げられたこともあり、欧米でも非常に知られた治療方法です。日本でも30年以上前に伝わっていますが、残念ながら医療システムの違いなどからあまり一般的には知られていません。
当院長は、一附院で一定期間の研修と臨床経験がある医師が受験できる試験に合格し、日本人では数少ない醒脳開竅針刺法の認定をもらっている一人です。
動きが悪い部分の動きを出す
動きが悪いのは、①動かすための筋肉が動かない。か、②その筋肉に拮抗する筋肉が緊張しすぎている。のどちらかです。
物をつかむ時、握力そのものが無ければつかめません。これが①の状態。指を開く筋肉の緊張が高すぎると指を開く方にずっと引っ張られている事になるのでつかみづらくなります。これが②の状態。醒脳開竅法ではこれを同時に治療します。
強く経絡を通すことで力が入り易くなる
私は臨床では「後ろ回し蹴りを食らわせて動かすようにする」と言ってますが(笑)、神経回路が器質的には存在しても、機能的に上手く使えなくなっている時に使う治療法です。いくつかのやり方がありますが、醒脳開竅法の特徴と言えます。
嚥下障害や構語障害には舌や喉の筋肉、また関係する神経に刺激
嚥下障害や構語障害には一定の治療効果が出ることが多いですが、この二者を比べると嚥下障害には非常に良い効果が見られることが多いです。むせる回数が減ったり、飲み込みやすくなったりということは良く起こります。それに対して構語障害は改善傾向になることは多いのですが、言葉は一回使いづらくなると使わなくなってしまうせいか、あるいは言葉を話すと言う事自体がものすごく複雑だからなのか、思ったように回復してゆかない事が多いです。
ただ、どちらも良い効果が期待できることが多いので、これも醒脳開竅法の特徴と言えます。
東洋医学と現代医学の知識を併用して治療
醒脳開竅法の最大の利点は現代医学と東洋医学の両方の理論を元に作られ、東洋医学的にも現代医学的にも治療の説明がある程度までできるところにあります。逆に言うと、醒脳開竅法は現代医学的な診断からでも、東洋医学的な診断からでも治療に使う事ができると言う事です。
その様な治療方法なので、それを使う鍼灸師にも症状に対して東洋医学的にも現代医学的にも理解している事が求められます。全てとは言いませんが、当然当院でも説明できます。
醒脳開竅法を理解し、運用している当院だからこそ、CVDのみだけではなく、MNDやALS、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(以下CIDP)やパーキンソン病(以下PD)にも応用することができます。
巨針療法とは
元々は、中国の先生がご子息の脳性麻痺を改善するために考案した治療方法と言われていて、日本では大阪の新城三六先生が第一人者です。
醒脳開竅法では神経に対して強くアプローチしますが、巨針療法は筋肉に対して強くアプローチするため、この二者をうまく組み合わせて使うと非常に良い治療効果が得られる実感があります。
長い鍼を経絡に沿って刺すことで動きが良くなる
巨針療法は、特殊な長い鍼を使い、経絡を一気に通す治療をします。それによって経絡の流れが良くなり、体の動きも良くなります。また、痛みなども改善します。
醒脳開竅法でも経絡に沿って鍼を打つ「排刺」という方法がありますが、排刺とは違った作用があり、これらをうまく組み合わせて使う事で、脳や神経の病気に幅広く対応することができます。
頭鍼パルスとは
頭に鍼をする事を「頭皮鍼」と言いますが、頭に鍼を刺して、その刺した鍼に低周波の電気を流します。それによって、脳の血流改善を目指す方法です。
現代医学的にも、頭部への外部からの刺激は、頭蓋骨を貫通している静脈を介して脳内へ影響することが分かっていて、脳の局所的な血流改善や刺激になると考えています。
神経パルスとは
手足を動かす末梢神経のそばに鍼を打ち、そこに低周波の電気を流すものです。
これは、神経を介して筋肉低下を改善させる目的で当院では使用していますが、筋肉が大きく動いたり、比較的に刺激が強い傾向があるので、適応を見極めて使用することになります。