まっちゃん先生のコラム

嚥下障害・構語障害

1.概要
脳梗塞などの脳血管障害(CVD)や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの難しい病気で起こる症状の中で、物を飲む込みづらくなったり、飲食の際にむせやすくなったりするものを嚥下障害と言い、ろれつが回らなくなったり、舌っ足らずな話し方になってしまうものを構語障害(構音障害)と言います。

 嚥下障害や構語障害は、脳幹の延髄と言う脳の一部分に障害があったり、延髄に関係する脳の部分で障害が起こると、発生する症状で、「(仮性)延髄麻痺」や「(仮性)球麻痺」と言われたりもします。

 鍼灸治療では、嚥下障害や構語障害に比較的良い治療効果が得られることが多く、また東洋医学的に全身を捉えて治療に臨むため、全身的に調子が上向くことが多く、有効な治療方法と考えています。


2.東洋医学ではどのようにかんがえるのか
 東洋医学では臓腑や経絡が身体各部を正常に機能させていると考えています。嚥下障害や構語障害では、「舌」や「咽」や「喉」がその機能を発揮できなかったときに起こると考えますが、この「舌」や「咽」や「喉」には、それぞれに関連の深い臓腑や経絡があります。これらの臓腑や経絡が正常に機能することで、「舌」や「咽」や「喉」も正常に機能することができます。

 いくつか関連の深い臓腑や経絡がありますが、特に「心」や「任脈」の関連が深いとされています。

嚥下・構語障害:頭顔面部の鍼灸治療
下・構語障害:頭顔面部の鍼灸治療

嚥下・構語障害:下肢の鍼灸治療
嚥下・構語障害:下肢の鍼灸治療


3.どのように鍼灸治療を施すのか
 鍼灸治療における方針は三種類です。一つは「舌」「咽」「喉」の局所に直接的な鍼灸治療を施すこと。もう一つは関連の深い臓腑や経絡に鍼灸治療を施すこと。そして、どの鍼灸治療の場合でも行いますが、全身のバランスを見極めて調整することです。

 嚥下障害や構語障害を持つ場合は、全身の状態が重篤な場合から軽度な場合まで幅が広いため、治療に使用するツボや鍼や刺激量にも幅があります。よって、治療頻度や治療期間にも身体の状況によって大きく違いが出てしまいます。積極的に治療に取り組む場合には、週2~3回を基準にして、体力や環境によって頻度を増減します。比較的焦らずに治療に取り組む場合には、週1回ほどを基準にして取り組んでゆきます。


 嚥下障害や構語障害に対する鍼灸治療は、比較的良い治療効果が望めます。特に発症からあまり時間が経っていない場合(おおよその目安として発症から3~6ヶ月以内)では、嚥下や構語が治療直後に変化することも少なくありません。

 リハビリとはじめとする、いろいろな取り組みが併せて必要になりますが、鍼灸治療を取り入れることで非常に良い経過を取ることが、少なからず見受けられますので、お困りの方は、ぜひご検討してみてはいかがでしょうか。

東洋医学用語説明
1.任脈:経絡の一つで身体前面の正中線上を走行する経絡である。「任」は「妊」に通じるとされ、特に女性には重要な経絡の一つとされる。
2.咽:のどぼとけより上の部分の咽喉のこと。
3.喉:のとぼとけより下の部分の咽喉のこと。


コラムカテゴリー